SINGLEMAN’S HOTEL LIFEへようこそ。 ホテルを起点に世界を旅し、その土地で出会った景色や建築、食や文化──そんな旅の破片を綴っている。
2026年9月18日、ミシュランガイドから「ミシュランキーホテルセレクション2026」が発表された。日本から選ばれたのは145軒。内訳は、3ミシュランキーが7軒、2ミシュランキーが23軒、1ミシュランキーが115軒となった。2025年の128軒から17軒増え、ミシュランキーを持つ日本のホテル・旅館は着実に増えている。
ただ、今年の発表で個人的に面白いと思ったのは、その「数」ではない。2025年と2026年、2年分のリストを比較できるようになったことで、ミシュランがどのようなホテルを評価しているのか、その輪郭が少しずつ見えるようになってきたことだ。開業からわずか半年ほどでキーを獲得するホテルがある一方、前年までキーを持っていたホテルがリストから姿を消した。さらにブランド単位で眺めてみると、「ふふ」や「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS」のように、複数の施設がまとまって選ばれているケースも目につく。もちろん、ミシュランキーはあくまで個々のホテルを評価するものだ。
それを前提としたうえで、2026年のリストを少し違った角度から眺めてみたい。
ミシュランキーとは?
ミシュランキーは、レストランにおける「ミシュランスター」のホテル版ともいえる評価制度。ミシュランガイドのホテルセレクションに掲載されている宿泊施設の中から、特に優れた滞在体験を提供するホテルや旅館に授与される。
評価は3段階。
1ミシュランキー:特別な滞在
2ミシュランキー:素晴らしい滞在
3ミシュランキー:最上級の滞在
評価にあたっては、建築とインテリアデザイン、サービスの質と一貫性、施設の個性や独自性、価格に見合う価値、地域ならではの体験という5つの基準が用いられる。レストランの星が料理を中心に評価するのに対して、ホテルでは建築やデザイン、サービス、土地との関係性まで含めた「滞在そのもの」が評価される。ホテルを旅の目的地として考える私にとっては、なかなか興味深い評価軸だ。
ミシュランキー2026|日本のホテル・旅館全145軒
2026年、日本でミシュランキーを獲得した宿泊施設は145軒。2025年の128軒から17軒増加した。
3ミシュランキーは前年と同じ7軒で、顔ぶれにも変化はなかった。ブルガリ ホテル 東京、フォーシーズンズホテル東京大手町、パレスホテル東京、強羅花壇、あさば、アマネム、ホテル ザ ミツイ キョウト。都市型ラグジュアリーホテルから歴史ある旅館まで、日本を代表する7軒が最高評価を維持した。
一方、2ミシュランキーには動きがあった。2025年に1キーだった京都の「要庵 西富家」が2キーへ昇格。さらに「強羅花壇 富士」と「カペラ京都」が、新規掲載ながらいきなり2ミシュランキーを獲得した。
1ミシュランキーには17軒が新たに加わっている。
つまり2026年の新規選出は、2キーの2軒と1キーの17軒を合わせた19軒となる。以下が、その一覧だ。
| ミシュランキー | ステータス | ホテル名 | 場所 |
|---|---|---|---|
| 3ミシュランキー | ブルガリ ホテル 東京 | 東京 | |
| 3ミシュランキー | パレスホテル東京 | 東京 | |
| 3ミシュランキー | フォーシーズンズホテル東京大手町 | 東京 | |
| 3ミシュランキー | 強羅花壇 | 神奈川 | |
| 3ミシュランキー | あさば | 静岡 | |
| 3ミシュランキー | アマネム | 三重 | |
| 3ミシュランキー | ホテル ザ ミツイ キョウト | 京都 | |
| 2ミシュランキー | 坐忘林 | 北海道 | |
| 2ミシュランキー | ザ・リッツ・カールトン 日光 | 栃木 | |
| 2ミシュランキー | ふふ 日光 | 栃木 | |
| 2ミシュランキー | アマン東京 | 東京 | |
| 2ミシュランキー | ザ・キャピトルホテル 東急 | 東京 | |
| 2ミシュランキー | ジャヌ東京 | 東京 | |
| 2ミシュランキー | ふふ 河口湖 | 山梨 | |
| 2ミシュランキー | THE HIRAMATSU 軽井沢 御代田 | 長野 | |
| 2ミシュランキー | The Shinmonzen | 京都 | |
| 2ミシュランキー | アマン京都 | 京都 | |
| 2ミシュランキー | 西村屋 本館 | 兵庫 | |
| 2ミシュランキー | 庭園の宿 石亭 | 広島 | |
| 2ミシュランキー | ベネッセハウス | 香川 | |
| 2ミシュランキー | 御宿 竹林亭 | 佐賀 | |
| 2ミシュランキー | ENOWA YUFUIN | 大分 | |
| 2ミシュランキー | 亀の井別荘 | 大分 | |
| 2ミシュランキー | 雅叙苑 | 鹿児島 | |
| 2ミシュランキー | ハレクラニ沖縄 | 沖縄 | |
| 2ミシュランキー | ユサンディ | 沖縄 | |
| 2ミシュランキー | ローズウッド宮古島 | 沖縄 | |
| 2ミシュランキー | New | 強羅花壇 富士 | 静岡 |
| 2ミシュランキー | New | カペラ京都 | 京都 |
| 2ミシュランキー | Promoted | 要庵 西富家 | 京都 |
| 1ミシュランキー | 東山ニセコビレッジ・リッツ・カールトン・リザーブ | 北海道 | |
| 1ミシュランキー | シグチ | 北海道 | |
| 1ミシュランキー | MUWA NISEKO | 北海道 | |
| 1ミシュランキー | パーク ハイアット ニセコ HANAZONO | 北海道 | |
| 1ミシュランキー | 山翠ニセコ | 北海道 | |
| 1ミシュランキー | 雪ニセコ | 北海道 | |
| 1ミシュランキー | ANAインターコンチネンタル安比高原リゾート | 岩手 | |
| 1ミシュランキー | OSTERIA SINCERITA | 山形 | |
| 1ミシュランキー | 山形座 瀧波 | 山形 | |
| 1ミシュランキー | 鬼怒川渓翠 | 栃木 | |
| 1ミシュランキー | 別邸 仙寿庵 | 群馬 | |
| 1ミシュランキー | TRUNK(HOTEL)YOYOGI PARK | 東京 | |
| 1ミシュランキー | ベルスター 東京 | 東京 | |
| 1ミシュランキー | オーベルジュ ときと | 東京 | |
| 1ミシュランキー | K5 | 東京 | |
| 1ミシュランキー | マンダリン オリエンタル 東京 | 東京 | |
| 1ミシュランキー | ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町 | 東京 | |
| 1ミシュランキー | ザ・ペニンシュラ東京 | 東京 | |
| 1ミシュランキー | シャングリ・ラ 東京 | 東京 | |
| 1ミシュランキー | フォーシーズンズホテル丸の内 東京 | 東京 | |
| 1ミシュランキー | ホテルニューオータニ(東京)エグゼクティブハウス 禅 | 東京 | |
| 1ミシュランキー | 東京ステーションホテル | 東京 | |
| 1ミシュランキー | THE AOYAMA GRAND HOTEL | 東京 | |
| 1ミシュランキー | アンダーズ 東京 | 東京 | |
| 1ミシュランキー | オークラ東京 | 東京 | |
| 1ミシュランキー | ザ・リッツ・カールトン東京 | 東京 | |
| 1ミシュランキー | フェアモント東京 | 東京 | |
| 1ミシュランキー | インターコンチネンタル横浜 Pier 8 | 神奈川 | |
| 1ミシュランキー | ザ・カハラ・ホテル&リゾート 横浜 | 神奈川 | |
| 1ミシュランキー | エスパシオ箱根迎賓館 麟鳳亀龍 | 神奈川 | |
| 1ミシュランキー | ザ・ひらまつ ホテルズ&リゾーツ 仙石原 | 神奈川 | |
| 1ミシュランキー | ふふ 箱根 | 神奈川 | |
| 1ミシュランキー | 箱根・強羅 佳ら久 | 神奈川 | |
| 1ミシュランキー | 里山十帖 | 新潟 | |
| 1ミシュランキー | あらや滔々庵 | 石川 | |
| 1ミシュランキー | べにや無何有 | 石川 | |
| 1ミシュランキー | 一 能登島 | 石川 | |
| 1ミシュランキー | 光風湯圃 べにや | 福井 | |
| 1ミシュランキー | BYAKU Narai | 長野 | |
| 1ミシュランキー | ししいわハウス軽井沢 | 長野 | |
| 1ミシュランキー | ふふ 旧軽井沢 静養の森 | 長野 | |
| 1ミシュランキー | ふふ 軽井沢 陽光の風 | 長野 | |
| 1ミシュランキー | 松籟荘 | 長野 | |
| 1ミシュランキー | 倭乃里 | 岐阜 | |
| 1ミシュランキー | アルカナ イズ | 静岡 | |
| 1ミシュランキー | おちあいろう | 静岡 | |
| 1ミシュランキー | 富岳群青 | 静岡 | |
| 1ミシュランキー | 富士スピードウェイホテル | 静岡 | |
| 1ミシュランキー | 沼津倶楽部 | 静岡 | |
| 1ミシュランキー | 熱海・伊豆山 佳ら久 | 静岡 | |
| 1ミシュランキー | TIAD | 愛知 | |
| 1ミシュランキー | ザ タワーホテル ナゴヤ | 愛知 | |
| 1ミシュランキー | ザ・ひらまつ ホテルズ&リゾーツ 賢島 | 三重 | |
| 1ミシュランキー | 御宿The Earth | 三重 | |
| 1ミシュランキー | ROKU KYOTO | 京都 | |
| 1ミシュランキー | エースホテル京都 | 京都 | |
| 1ミシュランキー | ギャリア・二条城 京都 | 京都 | |
| 1ミシュランキー | ザ・ホテル青龍 京都清水 | 京都 | |
| 1ミシュランキー | ザ・リッツ・カールトン京都 | 京都 | |
| 1ミシュランキー | シックスセンシズ 京都 | 京都 | |
| 1ミシュランキー | デュシタニ京都 | 京都 | |
| 1ミシュランキー | パークハイアット京都 | 京都 | |
| 1ミシュランキー | バンヤンツリー・東山 京都 | 京都 | |
| 1ミシュランキー | フォーシーズンズホテル京都 | 京都 | |
| 1ミシュランキー | ふふ 京都 | 京都 | |
| 1ミシュランキー | 星のや京都 | 京都 | |
| 1ミシュランキー | ホテル ザ セレスティン京都祇園 | 京都 | |
| 1ミシュランキー | 貴船 右源太 | 京都 | |
| 1ミシュランキー | 源氏京都 | 京都 | |
| 1ミシュランキー | 翠嵐 ラグジュアリーコレクションホテル 京都 | 京都 | |
| 1ミシュランキー | 柊家 | 京都 | |
| 1ミシュランキー | W大阪 | 大阪 | |
| 1ミシュランキー | インターコンチネンタルホテル大阪 | 大阪 | |
| 1ミシュランキー | コンラッド大阪 | 大阪 | |
| 1ミシュランキー | ザ・リッツ・カールトン大阪 | 大阪 | |
| 1ミシュランキー | パティーナ大阪 | 大阪 | |
| 1ミシュランキー | フォーシーズンズホテル大阪 | 大阪 | |
| 1ミシュランキー | JWマリオット・ホテル奈良 | 奈良 | |
| 1ミシュランキー | ふふ 奈良 | 奈良 | |
| 1ミシュランキー | イズモ ホテル ザ クリフ | 島根 | |
| 1ミシュランキー | SIMOSE ART GARDEN VILLA | 広島 | |
| 1ミシュランキー | Azumi Setoda | 広島 | |
| 1ミシュランキー | Ryokan 尾道西山 | 広島 | |
| 1ミシュランキー | 別邸 音信 | 山口 | |
| 1ミシュランキー | 直島旅館ろ霞 | 香川 | |
| 1ミシュランキー | 瀬戸内リトリート青凪 by 温故知新 | 愛媛 | |
| 1ミシュランキー | ザ・リッツ・カールトン福岡 | 福岡 | |
| 1ミシュランキー | 旅亭 半水盧 | 長崎 | |
| 1ミシュランキー | 五島リトリート ray by 温故知新 | 長崎 | |
| 1ミシュランキー | TAYUTA | 熊本 | |
| 1ミシュランキー | ANAインターコンチネンタル別府リゾート&スパ | 大分 | |
| 1ミシュランキー | 湯布院 玉の湯 | 大分 | |
| 1ミシュランキー | sankara hotel & spa 屋久島 | 鹿児島 | |
| 1ミシュランキー | 妙見石原荘 | 鹿児島 | |
| 1ミシュランキー | ザ・ひらまつ ホテルズ&リゾーツ 宜野座 | 沖縄 | |
| 1ミシュランキー | ワンスイート ザ・グランド | 沖縄 | |
| 1ミシュランキー | 百名伽藍 | 沖縄 | |
| 1ミシュランキー | ザ・リッツ・カールトン沖縄 | 沖縄 | |
| 1ミシュランキー | New | HOTEL 白林 HAKODATE | 北海道 |
| 1ミシュランキー | New | AZUMA FARM Koiwai | 岩手 |
| 1ミシュランキー | New | パーク ハイアット 東京 | 東京 |
| 1ミシュランキー | New | ふふ 東京 銀座 | 東京 |
| 1ミシュランキー | New | JWマリオット・ホテル東京 | 東京 |
| 1ミシュランキー | New | 1 Hotel Tokyo | 東京 |
| 1ミシュランキー | New | Casa CABaN HAYAMA | 神奈川 |
| 1ミシュランキー | New | つる幸 | 石川 |
| 1ミシュランキー | New | 扉温泉 明神館 | 長野 |
| 1ミシュランキー | New | THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 熱海 | 静岡 |
| 1ミシュランキー | New | ハシェンダ ヴィソン ホテル | 三重 |
| 1ミシュランキー | New | 帝国ホテル 京都 | 京都 |
| 1ミシュランキー | New | ウォルドーフ・アストリア大阪 | 大阪 |
| 1ミシュランキー | New | 紫翠 ラグジュアリーコレクションホテル 奈良 | 奈良 |
| 1ミシュランキー | New | 星のや竹富島 | 沖縄 |
| 1ミシュランキー | New | ジバナ宮古島 | 沖縄 |
| 1ミシュランキー | New | 星のや沖縄 | 沖縄 |
公式HPを元に筆者作成
2025年から消えたホテルは2軒
新しく選ばれたホテルが19軒ある一方で、2025年のリストにあって2026年には掲載されなかった宿泊施設もある。「那須 無垢の音」と「MUNI KYOTO」だ。どちらも2025年は1ミシュランキーを獲得していた。ただし、この2軒は同じ「選外」として扱うべきではなさそうだ。
那須 無垢の音は、石上純也が設計した「水庭」に隣接する宿泊施設として2024年4月に開業。開業した2024年から2年連続で1ミシュランキーを獲得していた。しかし2026年7月、同ホテルは2026年12月1日をもって営業を終了すると発表した。したがって今回リストから外れたことを、単純に「ミシュランの評価が下がった」と捉えるのは適切ではないだろう。むしろ気になるのは、これほど短期間で営業終了を迎えることそのものだ。世界的にも評価の高いランドスケープ「水庭」を擁し、開業直後からミシュランキーを獲得したホテルが、わずか2年余りでその歴史に幕を下ろす。ホテルの評価と、ホテル事業としての持続可能性は必ずしも一致しない。そのことを象徴するような事例にも思える。
もう一軒が、京都・嵐山のMUNI KYOTO。こちらは2024年、2025年と2年連続で1ミシュランキーを獲得していたが、2026年はキーを獲得していない。ホテル自体は現在も営業している。ミシュランキーは、一度獲得すればその評価が保証されるものではない。2026年もミシュランガイドのホテルセレクションに掲載されているホテルは改めて選定対象となっている。MUNI KYOTOがなぜキーを失ったのか、その具体的な理由は公表されていない。だから外部から理由を推測することはできない。ただ、ミシュランキーが毎年更新される「現在の滞在体験への評価」であることは、この事例からもよく分かる。
今後、キーを失うホテルや、反対に1キーから2キー、3キーへと評価を上げるホテルが増えてくれば、ミシュランキーの性格はさらに見えてくるだろう。
「ホテル」ではなく「ブランド」が評価されている?
リストを眺めていて以前から少し気になっていることがある。それは、特定のホテルブランドの施設がかなり高い割合で選ばれていることだ。もちろん、ミシュランはブランドを評価しているのではなく、個々の宿泊施設を評価している。そして同じブランドが複数選ばれるのは、そのブランドが高い水準のホテルを継続的につくっている結果とも考えられる。それでも、ブランドごとに並べてみるとなかなか興味深い。
たとえば「ふふ」。2025年には7施設がキーを獲得し、国内ブランドとして最多だった。そして2026年、新たに「ふふ 東京 銀座」が1ミシュランキーに加わった。現在展開する10施設のうち、実に8施設がミシュランキーを持つことになる。河口湖と日光は2ミシュランキー。奈良、京都、箱根、軽井沢の2施設、そして東京銀座が1ミシュランキー。一方、現時点でキーを持たないのは「ふふ 熱海」と、2026年2月に開業したばかりの「ふふ 城ヶ島 海風のしらべ」だ。ここまで高い割合になると興味深い。「ふふ」というブランドが確立している世界観、サービス、客室温泉、食、土地との関係性などが、ミシュランの評価基準とかなり相性が良いのではないか。そんな仮説も立てたくなる。
THE HIRAMATSU HOTELSも同様だ。現在6つのホテルを展開しているが、2026年は「THE HIRAMATSU 軽井沢 御代田」が2ミシュランキー。賢島、仙石原、宜野座、そして今年新たに選ばれた熱海が1ミシュランキーとなっている。つまり6施設中5施設。キーを持たないのはTHE HIRAMATSU 京都のみとなる。ひらまつの場合は「美食」がブランドの明確な核になっている。ホテルごとに建築も土地も異なる一方で、滞在の中心に食があるという体験設計は共通している。
個々のホテルを審査した結果として同じブランドの施設が並んだのか。それとも、ブランドとして確立されたサービスや世界観が、個々のホテルの評価にも強く作用しているのか。外から答えを知ることはできない。ただ、ミシュランキーを「ホテル単体」だけでなく「ブランド」という単位でも眺めてみると、また違った景色が見えてくる。今後データを蓄積していくと、この傾向はさらに面白くなりそうだ。
開業から半年でミシュランキー。それは早すぎないだろうか
そして2026年のリストを見ていて、もうひとつ気になったことがある。新しいホテルへの評価が、とても早いことだ。2026年の新規19軒には、古くから営業する宿が今年初めて選ばれたケースと、文字通り最近開業したホテルの両方が含まれている。
後者の中には驚くほど新しいホテルもある。
2025年7月開業の「HOTEL 白林 HAKODATE」「強羅花壇 富士」。
2025年10月開業の「JWマリオット・ホテル東京」。
2025年11月開業の「ふふ 東京 銀座」。
ここまではまだ分かる。少なくとも発表までには約10か月から1年ほど営業している。
驚くのは2026年開業組だ。
「1 Hotel Tokyo」と「帝国ホテル 京都」は2026年3月5日開業。
「カペラ京都」は3月22日。
「Casa CABaN HAYAMA」は3月26日。
そして「AZUMA FARM Koiwai」に至っては4月23日に開業したばかりだ。9月18日の発表時点で、開業からまだ5か月にも満たない。それでも1ミシュランキーを獲得した。
さらにカペラ京都と強羅花壇 富士は、新規掲載でいきなり2ミシュランキーである。これは素直にすごい。一方で、ホテル好きとして少し引っかかるところもある。新しいホテルの建築やインテリアを評価することは、開業直後でもできる。客室の快適性も、料理も、ある程度は評価できるだろう。しかしホテルというものは、それだけなのだろうか。
スタッフが空間に慣れ、オペレーションが安定し、サービスにそのホテルらしいリズムが生まれる。庭の木々が育ち、建物が少しずつ土地になじんでいく。常連客が生まれ、ホテルと街との関係が築かれていく。そうした「時間」もまた、ホテルという場所をつくる重要な要素だと私は思っている。
もちろん、ミシュランのインスペクターがどの時点で、何回、どのように調査したのかは公表されていない。だから「評価が早すぎる」と断定するつもりはない。それでも、4月に開業したホテルが9月には「特別な滞在」と認定されるスピード感を見ると、「ホテルの完成度は、いつ判断できるものなのだろう。」そんな疑問は残る。
興味深いことに、2026年の新規選出は新しいホテルばかりでもない。長い歴史を持つ「扉温泉 明神館」が今年初めて1キーを獲得したほか、星のや竹富島や星のや沖縄など、開業から年月を重ねたホテルもNewとして加わった。
ミシュランにおける「New」は、「新しいホテル」という意味ではない。あくまで「今年新たにキーを獲得したホテル」だ。だからこそ、開業数か月のホテルと長年営業してきたホテルが同じ「New」という記号の中に並んでいるのが面白くもある。
終わりに
2026年の3ミシュランキーを見ると、530年の歴史を持つ「あさば」のような旅館と、ブルガリ ホテル 東京のような現代の都市型ラグジュアリーホテルが同じ最高評価に並ぶ。2キーにも、歴史ある旅館、国際ブランド、リゾート、スモールホテルが混在している。
ホテルの大きさでも、歴史でも、価格でもなく、「どんな滞在を提供しているのか」で横断的に見る。それがミシュランキーの面白いところなのだろう。一方で、評価対象がこれほど多様だからこそ、ミシュランが考える「優れたホテル」とは何なのかを考える余地も大きい。
私自身のホテルの好みと、ミシュランキーの評価が一致するとも限らない。だからこそ、このリストは「正解」として見るより、ホテルを見るためのひとつの視点として使う方が面白いと思っている。
まだ始まったばかりの評価制度だからこそ、こうした変化を毎年追っていくこと自体が面白い。ミシュランキーがこれからホテル選びにおける「星」のような存在になっていくのか。それとも、ホテルという複雑な体験を評価する新しい物差しとして、レストランとは違った存在になっていくのか。来年、今回選ばれた145軒がどう動くのか。そして今年開業したばかりのホテルたちが、その評価を維持できるのか。
また一年後、リストを眺めながら考えてみたい。
では、また旅のどこかで。
