
聖なる島のサンクチュアリ。自然と涙がこぼれる。
ごきげんよろしゅう。
今回は、スリランカのベントータにあるホテル「ルヌガンガ」の滞在レビューをお届けする。
ここはジェフリー・バワの別荘だった場所だ。バワによって長い年月をかけて作りあげられてきたルヌガンガはまさにバワ未完の理想郷であり彼のキャリアの集大成と言っていい場所だ。
バワファンとして絶対に外せない聖域だ。
それでは、行ってきます。
旅のフラグメント

スリランカの最終かつ最大の目的地、ルヌガンガ。この地を訪れるためにスリランカに来たと言ってもいい。
ルヌガンガの入り口でここの護り人に迎えられる。その真っ白な衣装と人懐っこい笑顔のせいでまるで天使のよう。
その天使の案内で中へ入ると空気がふっと変わるのがわかる。まるで神社に入った時のような、暑いのにふっと涼しくなるような、そんな感覚。
やはりここは聖域だ。


ルヌガンガの建物は自然の一部だ。主役はあくまでも庭園で、建築はどこまでも謙虚に佇む。
自然の侵食を受け入れ、長い時間をかけて自然と一体になっていく。
時の流れも計算された場所。それがこのルヌガンガなのだ。



母屋を出て、シナモンヒルを登る。
照り付ける太陽に汗が頬を伝うが、丘の上に立つと風が吹き抜けて心地よい。
そしてこの小高い丘の大きな木のもとでバワは眠っている。
このスリランカの大地を見渡す特別席で、この場所を見守っているに違いない。


改めて、不思議な感覚になる場所だ。
縁も所縁もない場所なのに、ふとノスタルジーを感じる。
ただその場に身を委ねればふいに涙がこぼれそうになる。
訪れる者の人生にそっと寄り添ってくれる、ここはそんな場所だ。





バワは、3回の食事をそれぞれ異なるお気に入りの場所でとったそうだ。
時間による光の入り方や、風の吹き方でベストポジションがあるのだろう。
僕は緑に囲まれたこの夕食のための場所が特別に気に入った。
非日常なのに、感じる日常。
日々の暮らし、営み、そんなものが想像できるのだ。




名残惜しさを感じつつ、この場所に別れを告げる。
すると、それまでの快晴が嘘のように激しいスコールに変わった。
それはまるでバワからの、いや、ルヌガンガからの別れのあいさつのようだった。

時期:Summer, 2024
シングルマンシュラン:🌟🌟🌟🌟🌟
シングルマンシュラン定義
🌟🌟🌟🌟🌟: その国/地域に行く目的になるホテル(ポジティブ評価)
🌟🌟🌟🌟 : その国/地域を訪れた際は泊まりたいホテル(ポジティブ評価)
🌟🌟🌟 : その国/地域を訪れた際は候補の1つとして検討したいホテル(ポジティブ評価)
🌟🌟 : その国/地域を訪れた際に他に候補がなければ選んでもよいホテル(中立評価)
🌟 : その国/地域を訪れても選ばないホテル(ネガティブ評価)
※詳細な評価基準についてはこちらをご参照してほしい。
必ず再訪したい。
色彩、におい、空気・・ルヌガンガにいた時間のすべてが美しく愛おしい記憶として残っている。
そのときは、ヘリタンスカンダラマとナンバー11をセットにして、それぞれ連泊して、どこへも出かけずただただその空間を味わいたい。
評価詳細(各5点満点)
コストパフォーマンス:4点
価格だけをみれば決して安くはないが、あの広大なランドスケープを思えばむしろリーズナブルだろう。
それだけに今は所有者はバワ財団だが、万が一ホテル会社に買収されたらものすごい価格になりそうな予感。なお、2020年にルヌガンガの運営自体は、バワ財団からスリランカでブティックホテルを展開するteardrop hotelsに引き継がれている。
値段が上がる前に訪問しておきたい。
アクセス:2.5点
コロンボから最寄りのアルツガマ駅まで電車で2時間程度。さらにそこからuberやスリーウィラー等で15分ほどかかる。かなり奥まった場所にあり、ホテルの看板等もないのでアクセスは正直不便だ。
ちなみに私は比較的近くにあるヘリタンスアフンガラから直接車で行ったのでそこまで不便さは感じなかった。バワ建築巡りをしている方にはおすすめルートだ。
ソロフレンドリー:4点
個人的には、ルヌガンガはひとりで来るのがベストだと思っている。
広大な敷地に、ぽつぽつとコテージがあるのみ、さらに部屋にはテレビ等もない。外界から隔絶された聖域は静寂そのものだ。
だからこそここにいる時間だけは孤独を楽しみたい。きっとバワもそれを好んだはずだ。
キュイジーヌ:3.5点
今回はランチのカレーセットをいただいた。
スリランカではほぼ毎食カレーを食べていたが、ここのカレーが一番うまかった。家庭的というよりは洗練された味だ。
それだけに朝食や夕食も期待ができそうで、次回はぜひ味わってみたい。
クリーンネス&ファシリティー:3.5点
経年によって建物自体は古いと感じる部分が多いし、腐食しているような場所もある。そのような場所も基本的にはバワオリジナルを残すためそのままの状態だ。
バワは時間による変化もデザインに取り込んでいるので、木が変色していたり、苔がむしている様もむしろ美しいと感じるが、ぴかぴかが好きな人にはここは向かないだろう。
また設備も必要最低限だ。テレビもないしwifiもない。日常は忘れよ、というバワのメッセージなのかもしれない。なお、空調がない部屋もある。バフタブも部屋によってはなくシャワーのみだ。
部屋ごとにコンセプトや展望が全く異なるので、よく吟味しよう。
なお、部屋はどれもバワらしさがありながらもそれぞれコンセプトが異なるので、よく吟味したい。
日本人に一番人気なのは一面ガラス張りのグラスハウスだが、ルヌガンガの入り口付近にあることや、見学ツアーのスタート地点になっていることから、意外と日中は人通り(ホテルスタッフや見学ツアー客)が多く丸見えになってしまう。もちろんカーテンはあるが、カーテンをするとグラスハウスの良さが半減してしまうので、気になる方は他の部屋がオススメ。
そうはいってもやはり、グラスルームはかっこいいよな。。(うっとり)
連泊ができるのであれば、複数の部屋に泊まるのもあり。
ホスピタリティ:3点
ナンバー11と同様、高級ホテルとしてのサービスは期待できない。
私が見学に行ったときも、ちょっとしたトラブルがあって、事前に予約したにも関わらず「今日は見学できないかも・・」という状態になった(結局できたのだが)。
とはいえ、働く人はみな親切で、ルヌガンガを愛しているように見える。
思い通りにいかないこともいかないこともあるかもしれないが、「ま、そんなこともあるだろう」とゆったりした気持ちでいたい。
(もしかすると運営がteardrop hotelsに引き継がれた以降は、接客はレベルアップしているかもしれない)
センス&ユニークネス:5点
ルヌガンガは外の世界から隔絶された桃源郷だ。一歩ルヌガンガに立ち入ると、まるでお寺を訪れた時のような神聖な空気に包まれる。
広大な敷地はほとんどが庭園で、ぽつぽつと建物がある造りだが、どこにいてもバワのこだわりを感じることができる。それは芝生、池、小径、階段、彫刻、湖、視点など、さまざまな要素が調和するように庭園が設計されているためだ。
建物はその庭園の一部として配置されており、庭園と一体化している。
西洋と東洋、自然と建築、静と動が見事に融合したこの庭園は、スリランカ文化とバワの美意識を象徴する場所であり、唯一無二だ。
ところで、バワが眠るシナモンヒルに立つと、ふっと穏やかな風が丘を吹き抜ける。その心地よさに気が付くと涙がこぼれる。
ルヌガンガが気になるあなたに向けた予約方法
ルヌガンガのことが少しでも気になっていただけたら嬉しい。
そんなあなたのために私がオススメする予約方法を記しておく。それは以下の3つの大手予約サイトからの予約だ。各大手予約サイトのロゴをクリックすれば直接ホテルページにアクセスできるので、どなたでも簡単に、そしてお得に予約ができる。ぜひ利用してほしい。



ホテルストーリー
ルヌガンガは、1948年にバワがベントタ近郊にあった放置された古いゴム農園の土地を購入したことからスタートする。
バワは、もともとこの土地を週末の別荘として利用する計画だったが、建築家としてのキャリアを歩み始めた後、バワの実験的なデザインの場となった。つまり、この場所はバワが建築家になる前からバワが所有していたもので、バワが建築家を志すきっかけになったとも言える。
なお、ルヌガンガとは「塩の川」を意味する。これはルヌガンガは湖に突き出た岬にあるが、この湖が海に近く汽水域であることに由来するものだ。
バワは購入してから長い年月をかけルヌガンガを造っていく。
ルヌガンガの庭園デザインは、数十年にわたり少しずつ変更や改良が加えられた。時にルヌガンガからの景観が損なわれないように湖の向かいにある島を購入したりもしている。バワは亡くなる2003年でも完成したものと考えず、生涯を通じて手を加え続けた。
それゆえ、バワの未完の理想郷とも呼ばれる。そしてバワの死後、バワ財団によって一般公開、一部をホテルとして運営が開始されたのだ。
ホテル基本情報
- ホテル名: Lunuganga Estate / ルヌガンガ
- ホテルグループ: Teardrop Hotels
- 訪問時期: Summer, 2024
- 所在地: 国名:スリランカ、都市:ベントータ
- 滞在部屋タイプ: -
- 参考宿泊料金: 70,000円~
- 公式HP
終わりに&次回予告
ルヌガンガ、いかがだっただろうか?
私の中でこの場所は別格だ。完全に恋をしてしまっている。次回訪問できることを心待ちにしているが、もし訪れた方がいればぜひその時を素敵なお話を聞かせて欲しい。
宿泊はしていないが、ホテルのみなさま、迎えてくださってありがとうございました。
この記録があなたの旅の参考になれば嬉しい。

さて、次回だ。
これまで、6つのジェフリー・バワのホテルの滞在レビューをお届けしてきた。次回はこの6つも含め、バワの全ホテルと題して、泊まれるバワホテルをすべて紹介しようと思う。
配信は2025年1月4日予定だ。
できれば、お気に入り登録して楽しみに待っていただけると執筆も頑張れる。
それでは、また次回お会いしましょう。
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